Ryuji's room / 放射線科専門医 佐志隆士

アメリカ留学記 ~艱難辛苦の米国留学~

-悲しかったり、楽しかったり、いじけたり、頑張ったり-

53 アメリカ最南端Key West に行く

そろそろ帰国の時が近づいて来ていた。
大親友の矢田先生とアメリカ最南端Key Westに旅行に行くことになった。日本で矢田先生と出会っていたら親友どまりであったと思う。孤立無援の留学生生活のなかで助け合った心の絆は堅い。

矢田先生はまだアメリカに残って研究生活をするのだが、私が帰るということで、フロリダKey Westへの二泊三泊旅行を計画してくれた。米国人にとってもKey Westはトロピカルで憧れの観光地である。晴れた日にはキューバが見えるという。別荘地マイアミ、蚊で有名なエバーグレーイズ国立公園にも行く盛りだくさんの計画であった。
フロリダ、オーランドのディズニー・ワールドはクリスマス休暇に満喫していた。マイアミは巨大"熱海"、Key Westは巨大"天橋立"であった。アメリカは何でも大きい。(*1)
そして、Key Westはゲイが老後を過ごす温暖の地でもある。
このKey Westに一泊、マイアミに一泊の2泊3日の旅行は、矢田先生が、チケット、レンタカー、モーテル・・・と、全てを準備してくれた。矢田先生は超多事多忙の実験生活を送っていたので、この旅行は準備も含めて、大変なプレゼントであった。おそらくはアパートで美味しいカツ丼、モロモロを、毎週ご馳走していたことへの、矢田先生からの私への気持ちであったと思う。一重に私の人徳である。

ターキさん曰く、マイアミは「危ない」であった。調べてみると、飛行場からレンタカー乗り場までも危ない。レンタカーを守備良く借りられても、危険地域でエンストでもすると新婚カップルは大変な目に会うとのことである。
ターキさん自身が救出したこともあるとのことであった。パスポートを持った日本人観光客であることを見破られると危ないらしいのである。マイアミは米国犯罪発生率一位の都市であった。マイアミ空港に到着するとそこはヒスパニックの世界でスペイン語らしき言語が飛び交っている。 無事、レンタカーを借りて、高級リゾートのマイアミ・ビーチにたどりついた。好天にも恵まれ、巨大"熱海"とオシャレなカフェを楽しんだ後に、一路Key Westに向かった。運転はもちろん矢田先生である。私は小心者なのに加えて、車の運転もド下手である。矢田先生あっての米国ドライブ旅行であった。

カリブ海に突き出た巨大"天橋立"のKey Westを走りつづける。予想外に見晴らしは悪く、海がよく見えない。TV で車が海上を突っ走るCMをみると如何にも爽快なのだが、あれはヘリコプターから撮影するから、かっこよいのであって、実際の車の中からは横目に時々海が見えるという程度でちょっとがっかりした。イヤ、期待が大きすぎた。

そのあとすぐに、世界一綺麗な夕陽をみることができるという、帆船クルージングに出かける。確かに帆船でみる夕陽を綺麗であったが、心の中の世界一という期待からすると内心がっかりしていた。

そういえば、矢田先生の機嫌も悪い。それが、その後、夕食を食べると矢田先生の機嫌が急に良くなった。その時判ったのだが、矢田先生は、お腹が空いていると機嫌が悪くなるのだそうで、それは子供時からなのだそうである。この時は私に食欲が無く、夕飯が遅くなったのが原因であった。・・・暮らして見ないと判らないことは沢山ある。長時間一緒にいる旅行はお互いをよく知ることができる。
夕食後のshoppingでイルカのTシャツを沢山買ったが、後で値段をみると高い買い物であった。

高齢者は大抵ゲイである。ゲイは心優しく、人当たりが良い人が多い。我々も二人も、当然、ゲイカップルと思われていたはずである。

翌日はお目当てのヘミングウェイの家に行った。やはり管理人はゲイであった。庭にはプールがあったが、その当時は水をフロリダ本土から運んでいたらしい。何故か沢山のネコがいる。ヘミングウェイが住んでいた当時からネコはいたそうである。よく見るとネコも顔つきが微妙にアメリカンである。高校生の時に「老人と海」(*2)を読んで、いたく感動したが、此所の書斎で書かれたのか思うと感慨深かった。

アメリカ最南端の碑に立ち寄ってから、グレイス国立公園に行った。ワニが見られるという観光船には、シーズンオフで乗れなかった。他の観光客さえ誰一人いなかった。途中、車をおりて、周囲を眺めていたら、突如、蚊の大群が雲のように現れた。我々が出す二酸化炭素に反応して押し寄せるらしい。慌てて車の中に逃げ込んで、蚊取りスプレーで入り込んだ蚊を殺した。フロントガラスは殺した蚊の死骸でびっしり埋まった。 またまた恐ろしい思いをした。

夕方、マイアミのホテルにたどり着き、危険をかえりみず、近くのレストランで食事をして、翌朝、無事ダーラムに戻った。無事が何より。
結局、期待外れも多い旅行であった。大親友矢田先生と二泊三日の旅行をしたことが、人生の宝となった。イヤ、私の人生自体の意味である。

(*1)・・・
桁が違う大きさである。ビーチが水平線と地平線かなたに消える大きさ!
アメリカ大陸、凄い!!

(*2)・・・
本や映画は心に残るが、インターネットやテレビはむなしさが残る。
何でだろう・・・。


ヘミングウェイの家のネコ。 ネコもアメリカン。

世界一きれいな夕陽。 
残念(:~_~:) どうもカメラの設定が不味かった。

アメリカ最南端 Cubaまで90マイル

エバーグレーイズ国立公園で万歳。 何も無い。

巨大熱海のマイアミビーチ 矢田先生

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