Ryuji's room / 放射線科専門医 佐志隆士

アメリカ留学記 1-10 ~艱難辛苦の米国留学~

-悲しかったり、楽しかったり、いじけたり、頑張ったり-

12 ずるい日本人

富山の佐藤教授ご夫妻に州都のRaleighにブルースのコンサートに連れて行って貰いました。コンサートと言っても新聞で見つけたShaw大学キャンパスでの無料のコンサートです。やっと辿着いたキャンパスには白人は殆どいませんでした。

コンサートの途中で佐藤先生が「帰ろう」と言います。何故かと聞くと「警官が増えてきて何か変だ」と言います。私は連れてきてもらった訳ですから素直に従いました。その後、テレビ・ニュースでShaw大学近辺はその年度Raleigh全体で最も犯罪率が高い地域であったと聞いて佐藤先生の判断が正しかったのだとビックリした次第です。

米国は一言でいえば「多様性の国」です。一方、日本は「画一性の国」と言えるでしょう。普通に暮している分には米国人は日本人より善人であったと思います。ただ多様性の国ですので当然犯罪も多い訳です。

私が住んでいたDarhamは米国の黒人田舎町でのどかな所で、警官が犯罪に慣れておらず、New Yorkの居心地が悪くなり、流れてやってくる犯罪者に対応出来ない事が問題になっていました。

米国では危険地域と安全地域が明瞭に分かれています。Taki さんの住んでいるStreetの公園で犯罪があった時も、「安全地域とされている所で犯罪があった」ということが「ニュース」となっていました。私には犯罪者が危険なのであってTakiさんに私のアパートは安全と言われても最初は理解出来なかったのですが、米国では地域の安全は労力とお金をかけて確保しているのです。

アパートに何時も遊びに来てくれた黒人青年のDuaneに「日本では“ずるい”犯罪が多い」と言われて内心ムッとしたのですが、実際、統計的にも米国では凶悪犯罪が多く、日本では“ずるい”犯罪が多いのです。

昔、グレート東郷という日系レスラーは試合で相手の目に塩を入れたりと“ずるくて醜い日本人”を田吾作スタイルで演じたとのことです。米国人レスラーが最後には“ずるいグレート東郷”をやっつけてスッキリさせるというシナリオです。

一般に米国人は日本人を“ずるい”と思っているのです。いや、実際に“ずるい”のでしょう。米国での口に出来ないような不愉快な私の経験の幾つかは、冷静になって考えると“ずるい”ことをしていると勘違いされたと解釈するば納得が行きます。

留学後間も無くの頃、ラジオを聞き流していたら、20世紀大事件の第二位は「日本の真珠湾攻撃」と言っています。“えっと!”思い、米国人もひつこいなと憤慨しながらも耳をそばだてました。米国では12月7日にはテレビで真珠湾攻撃で亡くなった米国のハンサムな青年達の映像が流れます。米国民は子供の時から年に一度は“ずるくて卑怯な日本”の事を再認識するのであります。これは日本に対する憎しみを植え付けることが目的ではなく、「備えよ常に」ということであると理解しました。留学期間中、何度も見に行ったスター・ウォーズ・エピソードIでは非武装国家ナブーが最初に襲われます。

さて20世紀大事件の第一位は何だったと思いますか? それは「米国が長崎・広島に原爆を落としたこと」なのだそうです。私の英語力ではこれがどのようなアンケート結果であったか判りませんでしたが、“この国:米国”のバランス感覚に救われる思いがすると同時に、“この国に来てみて良かった”と思ったのであります。

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