Ryuji's room / 放射線科専門医 佐志隆士

アメリカ留学記 ~艱難辛苦の米国留学~

-悲しかったり、楽しかったり、いじけたり、頑張ったり-

07 「基本的には“邪魔者”」

図書館のテラスの椅子、よくここでハンバーガーを食べた!
South BuildingからNorth Buildingの間には無人カーが走っている。
図書館から見たNorth Building

私が留学していたのはDuke University Medical Centerの放射線科であります。

放射線科は診断だけで9つの部門(腹、乳、心肺、神経、核、小児、骨、救急、血管)に別れていて、私が居候していたのは骨部門です。教官達(faculty)が47人、研修医(resident)が40人、通常1年勤めるfellowは何人いたか不明ですが、骨部門には4人いました。放射線科診断部門だけで100人を越える医者がいるという訳です。

医学生はたまにしか見かけませんでした。信じられないことに放射線科の一番の仕事は研修医への教育です。研修医は安い給料で働く替りに高い教育を受けれると言うわけです。レジデントになるための競争率が50倍もあると言います。residentは9つの部門をrotationしながら4年で卒業し、放射線専門医試験を受けます。その後、大半は給料の良い病院に就職するそうです。日本のように医師が医局の支配下に置かれることはないようでした。

Fellowはすでに放射線科専門医ですが、教官を助けながら教育を受けるのが目的で、同じく安月給で働きます。骨部門のfellowの競争率は25倍とのことでした。医学生にご馳走・接待を重ねて入局させる日本とは大変な違いであります。Dukeの放射線科では毎朝7時からレジデント全員を対象とした講義があり、お昼休みには、骨部門来ているresidentのためだけに講義をしていました。アメリカ人は講義中に飲食いをして行儀が悪いとか聞いていましたが、どちらかというと研修医が食事をしている昼休みにも講義をしてしまうという感じでした。

留学前に、私が置かれる立場は、「基本的には“邪魔者”」であると先人より教えられていましたが、客観的に見ても“邪魔者”であることは間違いありません。第一に仕事をしない。もしくは出来ない。第二には英語を話せない、聴き取れない。第二の理由のためにチョットした雑用も頼めないからです。50倍の競争率を維持するだけのことはあって、教育は素晴らしいものがありました。研修医を叱ったり、恥をかかせる光景は留学期間中一度も出会いませんでした。

臨床各科とのカンファレンスは骨部門だけで週に5回もあるのですが、研修医は参加しません。カンファレンスは患者さんのためにあるものだからです。それぞれの科の主任がpresentationをして診断・治療方法について議論をするというのが原則でした。医学生や研修医のために教育は別個に十分な時間を割いて行なうのです。

この素晴らしい教育のおこぼれを小判鮫よろしく頂こうというのが私の立場でありましたが、如何せん、この素晴らしい教育が英語で行われているのが難点であります。耳をダンボにしていても何を言っているか判りません。膝のMRIの話しをしているのかと思っていたら、New Yorkのおばさんの話しに変わっていたり、昨夜のバスケットの試合の話しをしていたりします。

少しその場を離れて仕事をしている人でも耳の良いnativeは、突然、笑いだしたりもします。その上、カンファレンスに参加していると“背が高くてハンサムな整形外科医”が私の前に割り込んで来て肝心のX線写真が見えなくなってしまうのです。それで邪魔者の私はお昼を過ぎた頃には逃げ出したくなるという次第でした。私とX線写真との間を遮るという無礼な行為が無くなるのに半年程かかりました。私は背が高くてハンサムな男は嫌いです。

# 何故かDukeの男は皆、neat & handsome


#Duke University Medical CenterにはSouth とNorthのhospitalがあり無人電車で結ばれています。

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