Ryuji's room / 放射線科専門医 佐志隆士

アメリカ留学記 ~艱難辛苦の米国留学~

-悲しかったり、楽しかったり、いじけたり、頑張ったり-

52 大都会New Yorkへのお別れ旅行

ターキさんの紹介で友人になったインテリ黒人青年Duaneが、2泊3日の大都会New Yorkへのお別れ旅行を計画してくれた。
高速道路片道8時間のドライブである。矢田先生も一緒だ。運転はNew Yorkに慣れたDuaneがしてくれる。

DuaneはNew Yorkが好きだという。「何故か?」と聞くと「New Yorkは何でもありで、自由だから」という。New Yorkではどんな変人奇人でも普通の人でも誰も「肩がこらない」街らしい。肩がこらないのは、Duaneがちょっと変わった黒人であることが関係している。保守的な米国南部の田舎では、変人のインテリ黒人が暮らすのは窮屈なのかもしれない。

1泊目はカジノがあるアトランティック・シティ近くのモーテルに泊まった。3人で62ドルであった。
矢田先生とカジノに行ってみた。矢田先生がスロットマシーンに挑戦したが、一瞬にして数ドルが無くなった。私は賭け事に縁が無く(*1)、カジノにも全く興味が無かったのだが、学生の頃よく聞いたサリナ・ジョーンズのコンサートを丁度やっているのには心惹かれた。(*2)時間もチケットも無かったのは、残念だった。

翌朝、New Yorkに着くと、どこからとも無く、白人美女が現れて鍵を渡してくれる。Duaneとはどういう関係なのだろうか?どうやら留守中のDuaneの友人の家に泊まる計画らしい。留守中に、家ごと、黒人の友人男性と知らない日本人に貸して使わせるという感覚が私には理解出来なかった。
ともあれ、たどりつくとオシャレな一戸建ての立派な家・・・と、安堵したのもつかの間、コピーして貸してくれたその鍵が使えない。Duaneが携帯であちこちの友人に電話してくれて、ようやく、その晩はDuaneの別の友人の家に泊まることが決定したらしい。

その場でDuaneと別れて、矢田先生と相談の結果、ブロードウエイのミュージカルと自由の女神を観に行くことにした。日本人が考えるNew Yorkである。ミュージカルはキャッツを観た。全米の"お上りさん"と世界中の田舎者が劇場に集まって来ていることはすぐに判った。何を喋って歌っているのか全く判らず、矢田先生と私はすぐに爆睡した。

矢田先生と私はお互いに失敗を口にせずに、地下鉄を乗りついで自由の女神を観に行くことした。
自由の女神はリバティ島という島にあることがその時に初めて判った。ところがフェリーを間違って、スタテン島に行く無料フェリーに乗ってしまった。往復一時間であった。後で調べてみるとこのフェリーから観る自由の女神とマッハッタン見物も素晴らしいと書いてあった。その時は大失敗したことを後悔していた。あまりに準備不足なお別れ旅行であった。

夜に泊まりに行ったDuaneの友達のアパートは、白人の影も形もない、おそろしく危険な地域にあった。まず、車の中の荷物を空にした。
狭く汚いアパートに入ると、すでに寝てしまっている中学生の娘さんがいる。奥さんとは離婚したと言っていた。Duaneの友人は私と矢田先生に「自分の家だと思ってゆっくりしてくれ」と言って、夜のマンハッタンに遊びに行ってしまった。そして朝になっても帰って来なかった。
目を覚ました娘さんがビックリしたのは当然である。東洋人のオジサンが狭い部屋に二人もいる。目を丸くするとはあのことをいうのであろう。こうして、アメリカのかなり底辺に近いNew Yorkのアパートで一夜を過ごした。それにしても米国人の友人の大らかさにはびっくりした。
ブランチをみんなで食べたが、「キャッツを観に行った」と言ったら、その友人はすかさず"What's? Cats!"と驚いて叫んだ。
軽蔑が込められたその発音は今でも耳に深く残っている。愚かな観劇をしたことを再確認した。

「世界中で人間の喜怒哀楽は同じ」は、今回の留学で得た私の貴重な教訓であった。
しかしこの旅行で、日本人には想像を絶する"寛容さ"もあることを知った。それが、Duaneがくれた最高のプレゼントだった。

(*1)
私は、パチンコも麻雀もやったことが無い。賭け事は女にもてない人間がやるものだと思っている。

(*2)
サリナ・ジョーンズ:白(人)っぽく歌う黒人ジャズシンガー。聴きやすい。

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矢田先生といざ出発 私のアパート前です。

Duaneといざ出発、愛車黒のスタンザ

NewYorkに着いてEmpire state ビル。大きい。

空につきささるビルディング

間違って乗った船の上で私。青空でした。

フェリーから観るマッハッタン島、なるほど良いぞ!!

間違って乗ったフェリーから観る自由の女神
理由は判らないけれどゴッホの絵のような写真

自由の女神を眺めるご夫妻、これは狙って撮影。
ねらったとおり。 満足。

New Yorkでカラフルな牛さんがいたので記念撮影。
矢田先生

矢田先生に頼んで、私も記念撮影
Duke Medical centerのお気に入りTシャツを着ている。