Ryuji's room / 放射線科専門医 佐志隆士

アメリカ留学記 ~艱難辛苦の米国留学~

-悲しかったり、楽しかったり、いじけたり、頑張ったり-

23 Goodbye. Farewell and Amen

M*A*S*Hの夜11時半の放送に間に合うように、Medical Centerの図書館から11時には、帰宅する習慣が出来ました。M*A*S*Hの放送が終わるのは深夜0時半で、途中で寝たことも何度かありましたが、必ずvideoに撮っておきました。今でも段ボール箱の中に多数のvideoが入っています。私は9ヶ月間に渡って、毎晩欠かさず2話のM*A*S*Hを見ていました。最初は英語の勉強のつもりでしたが、すぐに、M*A*S*Hの大ファンになりました。

Goodbye, Farewell and Amen は、2時間半のM*A*S*H最終回の題名です。最終回videoは、昔のlaser diskからdoubbingして貰ったものですから, 英語字幕が出ません。このvideoを手に入れた時は、英語も相当聞き取れるようになっていたつもりでしたが、英語字幕が無いと、何を言っているか全然判りませんでした。自分の英語hearing能力の現実を知りガッカリしてしまいました。

この最終回は、朝鮮戦争の終戦間際から、終戦になって登場人物達がどのように帰国するかの物語です。 驚いたことに、最終回の始まりは主人公のHawkeyeが精神病院に入院しているところから始まります。

番組に何度か登場した精神科医のSidneyがHawkeyeに語りかけています。なんと主人公のHawkeyeは気がふれているのです。そしてhystericにSidneyに受け答えをしています。

ここで回想sceneに入ります。野戦病院の登場人物達は、ある日、海岸のresortに休暇で出かけて行きます。volleyballをしたり、泳いだり、楽しい一日を過ごします。Hawkeyeは「楽しかった」とのみ受け答えをしています。Sidneyは、記憶を失って、気がふれているHawkeyeに何とか記憶を取り戻させようとしています。

Hawkeyeは少しづつ思い出します。夜になり、帰路のバスの中に米兵が乗って来て、「もうすぐ北朝鮮のパトロールが来るから、静かに隠れろ」と命令します。バスの中には地元の韓国人も乗っています。後ろの座席で、地元の夫人に抱かれた鶏が鳴声をあげます。Hawkeyeは厳しい口調で、「静かにさせろ」と言います。

場面は、また精神病院でのSidneyとHawkeyeとの会話に戻ります。突如、Hawkeyeは絶叫します。帰路のバスの中で、 Hawkeyeが「静かにさせろ」と言ったために、地元の夫人は泣きやまない赤ん坊を窒息死させてしまうのです。

北朝鮮兵に見つかれば、バスの中の米国医師、看護婦、地元の人達も皆殺しされると思われる状況だったのです。

Hawkeyeは、おちゃめで、いたずら好き、でも本当は心優しい、腕の立つ外科医という役柄です。自分の言葉で、赤ん坊が母親から殺されてしまう光景を受け入れることが出来ず、記憶を失い、気がふれていたのです。そして殺された赤ん坊を鶏に置き換えていたのです。

M*A*S*Hは、朝鮮戦争野戦病院を舞台に繰り広げれる悲喜劇ですが、戦場の狂気を何時も扱っていました。最終回では、なんと主人公まで気がふれてしまいました。朝鮮戦争での米兵の死傷者数14万2091人とのことです。M*A*S*Hはさらに悲惨なVietnam戦争中に放送開始されています。

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