Ryuji's room / 放射線科専門医 佐志隆士

アメリカ留学記 ~艱難辛苦の米国留学~

-悲しかったり、楽しかったり、いじけたり、頑張ったり-

45 国際運転免許証取得(version 2)とW教授とのお約束

ノースキャロライナ州での国際運転免許証は取得日より10ヶ間も有効だが、出国直前に取る方が良い。このことを秋田県運転免許センターの担当官が留学先を確認した上で教えてくれたが、また来るのがめんどくさいので、出発まで時間はあったがその場で取得した。
私の留学期間は1年間というのがW教授とのお約束であった。現地での運転免許証は遅かれ早かれ必ず取る必要があった。(*)
実はノースキャロライナ州では転入居後3ヶ月以内に当地の運転免許証を取得する決りがあることを知っていたが無視していた。一度、帰宅途中、検問の警察官に運転免許証の呈示を求められたことがあった。
留学生が沢山いるDuke大学の近くだったためか警察官もあまり気にせず、あっさり通してくれた。 締め切りギリギリまでにやるのが私の芸風である。 それでも“起死回生のバックドロップ”とか言いながら、何とかやって来たのが私の人生であり、それなりに何とかやって来た。締め切りのない仕事や勉強は当然限りなく遅れるが、諦めないのも私の芸風である。英語が判らないための軽いノイローゼは軽快していたと思うが、怠惰のためにノースキャロライナ州運転免許証を取るのは遅れに遅れていた。

国際運転免許証の期限が切れるギリギリになって、さすがの私も運転免許証を取ることにした。運転免許証オフィスは、アパートからすぐ近くのショッピング・モールの中にある小さな建物であった。 筆記試験は文字が読めなくても出来る簡単なTVモニター試験であった。(**)それが終わると、おそろしく体格の良い婦人警官から実技試験を公道で受けた。 そもそも住んでいるところが森の中なので気楽なものである。 “Go straight.”、“Turn left.”・・・とか指示され、さらに舗装されていない脇道に入り、車庫入れのようなことをした。 このくらいの英語は理解できないと運転免許証すら貰えない。ともあれ、運転の下手なわたしですら簡単に合格した。 住んでいたDurhamが田舎だから簡単なのだろう。 Takiさんによれば、Durhamよりさらに田舎に行ってノースキャロライナ州運転免許証を取る裏技があることを聞いた。“いい加減”という意味では私の利害ともかなっていた。

丁度この頃、W教授から久しぶりにメールが来た。
「佐志先生へ、その後お仕事順調でしょうか。   ?中略?    私の悩みは段々増えるばかりです。そこで佐志先生がそちらでの残りの仕事を早く仕上げ、一日も早く帰秋し、困っている私を助けてくれるのを祈る毎日です。まずはお願いまで。 W」
私の返信メール
「早く帰って来てくれと言ってくれたのは、W先生と平安名常一先生だけであります。 最近なってやっと仕事も勉強も出来るようになったので、少しでも長くいたい気持ちと五体満足な内に早く帰りたい気持ちと半々であります。先生も御存知のように、意志薄弱の私ですから、帰国を延ばすとそれだけダラケルだけかもしれません。 やりかけの仕事だけは何とか仕上げて帰国したいと思います。与えられた時間を、充実させ、有効に使い、出来るだけ早く帰りたいと思います。 佐志隆士」
本音であった。(***)

* 私は大学講師としての給料を貰いながら長期海外研修という形で、Duke大学に留学していた。W教授とは一年間の約束であった。世間では知られていないことが、大学病院の医者(教官)は医師資格に対する手当てをほとんど貰っていない。 しかし、医師としての責任は存在するというひどい話である。 その代わり通常は許されるはずもない勤務時間内に他施設で兼業(バイト)を週に8時間以内で認められている。 不条理なことに8時間をはるかにこえて時間外勤務を強制されるのだが、時間外手当は一切払われない。 時間内に地域医療に貢献させるための文部科学省との暗黙の了解。 私の単身留学に伴う出費、 兼業収入の消失等も考慮して、一年程の留学が丁度良いと考えていた。

** アメリカらしさを痛感した。 米国は多人種、多言語国家である。文盲率も高いらしい。 私は留学期間中にアメリカの国勢調査 Census 2000を受けた。 言語がスペイン語、中国語等、五カ国語の中から選べたが日本語が無くてがっかりした。 偶然このCensus 2000に係わったDuke大学教授と話しをする機会があったが、米国在住の日本人は英語識字率が高いので日本語を加えても費用効果比が悪いと教えられた。なるほどと合点した。

*** それでも1ヶ月留学を延長し、帰国後ノイローゼを理由に1ヶ月夏休みを頂いた。 拙著「肩関節のMRI」メジカルビュー社を完成させるのが本当の目的であった。 教官職であるから仕事をさぼった訳ではない。・・・と思いたい。 ゴメンナサイ。 m(__)m


国際免許証

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