Ryuji's room / 放射線科専門医 佐志隆士

アメリカ留学記 ~艱難辛苦の米国留学~

-悲しかったり、楽しかったり、いじけたり、頑張ったり-

42 ナマズの唐揚げ

Takiさんには、中華料理buffetのPanda innに度々、連れていかれた。日本人の来客があった時とか、ことあるたびにPanda innでディナーとなった。Takiさんは必ず大好物の「ムール貝蒸し」を別皿で特別注文してモリモリ食べていた。
育ちの良い私はbuffet形式自体が嫌いである。粒々辛苦1)と躾けられたので、お皿やお茶碗が空になり、「ご馳走さまでした」を言えてから初めて食事の満足感が湧く。アメリカにはbuffet形式の店が沢山ある。好きなものを飽きるほど食べられることが、大食漢で品格無いアメリカ人に好まれるのであろう。留学前年にDuke大学のセミナーに参加した時も、Panda innに招待された。この店の壁に掛けられた「グルタミン酸ナトリウムは使用していません」2)と書かれた大きな掲示板に驚きと不快感を覚えた。

Fortune cookieの写真
Panda Inn
名刺入れに貼ったその時のおみくじの写真
T.J. Maxxで買ったCoachのキーホルダーの写真
今も愛用している。 10ドル位だっと思う。
ナマズの唐揚げ写真

アメリカの中華料理店ではcheck outの時に必ず、おみくじが入ったfortune cookie3)をくれる。最初に連れてこられた時にひいた運勢が大変良かったので、米国滞在中はfortune cookieはもう貰わないことにした。
Panda innに自分から行くことは一度も無かったが、Takiさんから紹介された近くのKorean 系食料品店には頻繁に通った、キムチ、さつま揚げがとても美味しくて必ず買った。日本系食料品店ハトヤより全てが格安であった。おタカいビジネススクールの奥方様は利用しないと聞いていた。実際日本人らしき客には稀にしか遭遇しなかった。
店員は当然、朝鮮語(韓国語)と英語を話す。店の奥から、お婆ちゃんがヨッコラショと出てきてくれて、私に日本語で話しかけてくれた。日本統治下の朝鮮で覚えたのであろう。ところが驚いたことに英語が全く喋れないという。米国に何十年も住んでいるのに英語が喋れないとはどういうことなのだろうか?要するにアメリカには好きで来たわけでは無いということだろう。
Panda inn の並びにT.J. Maxx4)という衣料品と雑貨が安い店を見つけた。衣類は大抵ここで買った。高級ブランド品が安く、日本に持ち帰り、未だに愛用しているお気に入りもある。

この店で、奥様と一緒に買い物に来ているFellowのポールに偶然出会った。Fellow の給料は安い5)からであろうか。
ポールの奥さんはフィリピン人のように私には見えた。アメリカではそういうことは問題にしないのが原則である。ポールはトムクルーズばりの男前だがちょっと背が低く、最初から私に一目置いてくれたこともあって仲良しだった。ただ、英語が下手な外国人に慣れておらず、私の英語を推測してまでは理解してくれなかった。
ある昼休みに病院のカフェテリアでポールとナマズの唐揚げ6)を二人で食べることになった。この時、ナマズの唐揚げを指差しながら「キャット・フィッシュ」と発音したが通じなかった。(>_<)繰り返し「キャット・フィッシュ」と発音する私をキョトンしながら見つめるポールの端正な顔が何時までも忘れられない。
学生の皆さん、留学は英語力が決め手です。大志を持って発音も練習してください。
“Boys Be Ambitious, Girls Be Beautiful”

1)粒々辛苦
米の一粒一粒が農民の苦労の結晶であること。転じて、こつこつと地道な努力を重ねること。大辞林

2)グルタミン酸ナトリウム
日本では「味の素」で有名。アメリカでは「中華料理店症候群」と言われて、一時期、摂取量の制限が設けられていた。実家の料理に味の素は必需品であったし、日本の誇るべき発明と教えられていた。

3)fortune cookie
“You have an important new business development shaping.” 「あなたは重大な新しい仕事の発展局面にいる。」私の理性では占いは信じたくないのだが、良い運勢は気分が良い。留学の決意と大いに関係した。これ以上の運勢は必要ないと思った。

4)T.J. Maxx
有名店の売れ残り商品を安売りしているチェーン店。ブランド品も一応新品。アメリカで男物のSサイズを探すのは大変。

5)Duke大学放射線科fellow
Fellowは、放射線科4年のレジデントを終えて放射線専門医の資格を持つ医者。当時のBone sectionには3人の有給fellowと、オーストラリア人のルークと私との二人の無給のfellowがいた。当時は競争率20倍と聞いた。現在は8人のfellowがいて、俸給は年54.534ドル

6)ナマズの唐揚げ
ナマズは南部アメリカ料理の素材としては有名。白身魚でDuke大学のカフェテリアのナマズの唐揚げは小ぶりで、味はマクドナルドのフィレオフィッシュの歯ごたえを良くした感じ。小骨も無かった。Catの[a]は長母音で「ぇあ」と僅かに長めに発音する。私の「キャット」は曖昧短母音でCut fish 「魚を切 れ!」に聞こえた可能性大。

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