散髪屋さんにも"虎の穴"がある。
銀座マツナガ八重洲店は八重洲クリニックのすぐ傍にある。ここ店は散髪屋さんの"虎の穴"である。全職員が理容師の資格を持っているが、ハサミを持たせて貰えるようになるまでは、修行が大変なのだそうだ。
若い人達は開店前から練習、閉店後も夜遅くまで練習している。全国から毎年就職する新人がいるとのことだが、離脱する人は少ないとのことである。はじめから"虎の穴"と判って修行にきているからであろう。
トップスタイリストの浅野さんの話によると、床に落ちている髪の断端をみれば、ある程度、腕前がわかるとのことである。浅野さんのカットは速い。今日も"ヨシ"という言葉が出た。10分程だろうか?「カットが速いとはどういう意味があるのか?」と訊ねてみると、「速いほど価値がある」との答えであった。「遅いということはお客さんの時間を奪っている」とのことである。そして「同じ仕上がりなら速い程、価値が高い」とのことであった。なるほど、速ければ一日にこなせるお客さんの数も増える。
速くカットできるための条件を訊ねてみた。すると、次の2点を教えてくれた。
(1) イメージができあがっていること
(2) そのイメージに向かって無駄の無いカットをすること
なるほどと感心した。何か外科手術、血管撮影に似ている。もちろんMRIの撮影も患者さんへの利益が同じであれば速い方が良いに決まっている。要領の良い人間は仕事が早い。
我々、画像診断医は手を抜いて速いということもあるので、手を抜いて速くすることに関して訊ねてみた。
「手を抜けば、それはお客さんに判ってしまう」との答えであった。仕上がりの良さは必須条件である。4200円は高いと言えば高い。浅野さんクラスのカットは日数が経っても髪が乱れないのだそうだ。でも月に一度はきてほしいとのことである。東京駅の前、地価の高い所で4200円、最高の散髪、お値打ちの散髪である。
八重洲クリニックを放射線科読影医の"虎の穴"にするためにはどうすれば良いだろうか?自分は虎だろうか?自分は何時も虎だろうか? 私が一通のレポートにかける時間は誰よりも長い。より速く、より適切に書く努力をしよう。