Ryuji's room / 放射線科専門医 佐志隆士

コラム Triple negative , (-) (-) (-)

先日、乳腺外科医が集まる勉強会に出席したら、「・・・triple negative症例の化学療法をどうするかが問題です。・・・」と議論をしている。
私はtriple Xは本格ポルノであることを知っていたが、「triple negative て何やろ???」と会場で一人淋しく疎外感を感じた。そこで、優視先生に個人授業を受けました。

女性は思春期になると女性ホルモンの影響を受けて、乳房が大きくなってくる(第二次性徴)。エストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)の二つが女性ホルモンである。乳腺同様に、乳癌の約6割が女性ホルモンにより増殖すると言われている。切除された乳癌組織を調べることにより、その乳癌がエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体を持っているかを調べることが出来る。乳癌組織がこれらの受容体を持っていれば、抗エストロゲン剤(タモキシフェン)やエストロゲンの産生を押さえるLH-RH*拮抗剤が有効である。

閉経した女性は、卵巣による女性ホルモンの産生を終了するが、副腎から分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)を、脂肪組織の中にある酵素:アロマターゼにより、エストロゲンに合成をしている。そこ故、閉経後の乳癌症例では、アロマターゼ阻害剤が有効な患者さんもいる。閉経後も女性らしく頑張るためには、脂肪も必要ということである。

一方、進行した乳癌の約3割がhuman epidermal growth factor receptor type2(HER2)を持っていて、癌増殖が活発である。HER2蛋白が過剰に存在すると乳癌の再発率が高く予後が悪い。HER2も摘出した乳癌組織から調べることが出来る。HER2陽性症例には分子標的治療薬であるトラスツズマブが有効である。HER2陰性ということは患者さんにとって良いことである。乳癌組織の「エストロゲン受容体」、「プロゲステロン受容体」、「HER2」の全てが陰性のtriple negative症例の場合、薬物療法的には抗癌剤しか打つ手がない。痛し痒しである。

LH-RH* 視床下部から分泌される「性腺刺激ホルモン放出ホルモン」

≪マンモグラフィのあすなろ教室 秀潤社より転載≫

≪このページのトップへ戻る≫