Ryuji's room / 放射線科専門医 佐志隆士

1.日替わり検査に日替わり責任者

・・・((≧Д≦)ww  [ルーチン検査と責任者の必要性]

長年、孤軍奮闘して働いていた秋田赤十字病院から秋田大学附属病院に呼び戻された。20年程前の話である。大学では、当時の最高機種GE社Signaが稼働してから一年も経っているのに、撮影方法もハード・コピーの作り方も「行き当たりばったり」でビックリした。撮影レベルが低いことを放射線科の医師も技師もおそらく気付いていなかったと想像される。原因は、放射線科医が日替わりで交代し、その都度、撮影指示を好き勝手に出していたからであった。誰もが勉強不足であった。当然、ルーチン撮影は無かった。ただし、ルーチンの撮影方法を各施設で模索していた楽しい時代でもあった。ルーチン検査法が無ければ、撮影の失敗が次に生かされない。撮影が向上するはずも無かった。取り敢えず、MRI撮影指示を全て私が出させて貰うことにした。当時は撮影件数も写真枚数も少なく、全ての撮影結果もチェックすることが出来た。撮影の失敗は私の失敗であり、私の責任であった。大いに反省しながら、撮影改善を技師さんと一緒に思案することができた。指示を出す医師にも、撮影する技師にもある程度、固定された責任者が必要である。責任者になればMRIの勉強も自ずと気合いが入る。

ルーチン検査を決めるためにはMRIの基本をしっかり勉強する必要もある。その当時の学会教育講演には「MRIの原理」が頻繁にあったが、最近は激減してしまった。Spin echo法も勉強したことの無い医師から「もっと薄く、もっと細かく、・・・あれも、これも」と無理難題を言われることがある。撮影技師さんがしっかりしていないとルーチン検査が滅茶苦茶になってしまう。“T2”に“WI”を付けただけでは基本を理解したことにはならない。

雑誌や教科書に書いてあるルーチン検査は大いに参考にした方が良い。しかし、そのままでは大抵使えない。第一に装置が違う。メーカー、機種名が同じでもversion が違えば撮影方法は変わってくる。その上、MRI装置には個体差もある。メーカーは個体差を絶対に教えてくれない。第二には、ルーチン検査法の執筆をするような人物は、その分野のマニアで、使用装置も最高機種のことが多い。一線病院で採用するには撮影時間がかかりすぎるし、高い読影能力も必要とされる。

現在ならば、取り敢えずMRI装置メーカーが用意してくれたルーチン検査に従うのが得策である。これがしっかり出来るようになってから、ルーチン検査の改善に取り組めば良い。各メーカーのアプリケーションは、全国津々浦々から撮影の成功と失敗を学び、自社製品を有効に使って貰いたいと思っているからである。また自社製品の内情にも詳しい。

適切なルーチン検査の採用、作成は初めの一歩である。良いルーチン検査の修得は、撮影者の負担と責任を大幅に軽減することができる。負担が減れば、良い撮影に専念できる。

*ルーチン[routine]:決まりきった、型にはまった、日常的な,機械的な手順

*MRIの個体差: 全く同一MRI装置でも、出来不出来があること。各装置にはさまざまな仕様(specification、スペック)が存在する。たとえば、静磁場均一性の許容範囲である。メーカーは自社製品を「スペックの中に収まっています。」と説明する。

*T2WI[T2 weighted image]、(T2強調画像):横緩和現象の影響をより強く受けるように工夫されたMRI画像。 T2は横緩和現象の時定数。現場ではT2強調画像をさらに省略して“T2”と呼ぶ。普通、学習者は“横緩和現象”、“時定数”を調べて行く。このように判らない概念を知らない用語で解説してあるので「つまずき悩む人」と「理解を諦める人」がいる。あまり気にしなくても良い。それでも「気になる人」がさらに深く勉強する。

*アプリケーション[application]: 適応、利用;各装置メーカの撮影技術指導者

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